巫女王様の部屋を後にする。
スレン様もあの後、すぐに出ていってしまった。
その背を見送った巫女王様はひどく消耗したように見えた。
弱々しく微笑むと少し横になっていいか、と仰ったので一も二もなく頷いた。
キーラを呼び、事の次第を伝えて後は任せる。
「どうぞお休み下さい。失礼します」
私にも誰か付ける、という声を振り切るように部屋を出た。
一人で考えたかった。
「契約」
「スレン様を縛り付ける」
「今度こそ解放してくれる巫女王を」
「真の相手では無い」
巫女王様とスレン様のやり取りで拾った言葉たちが、頭の中をぐるぐると回る。
何か大切なものを見落としているのではなかろうか?
私こそが次代の巫女王と相応しいという、その理由……。
答えは出てこない。だからこそ、いい知れぬ不安だけが湧き上がってくる。
私はこのまま、ここに居ていいのだろうか?
「……っ!?」
蓋をしようとしても浮かび上がって来るのは、否定的なものばかりだった。
そんなはずはない、ここに居れば私は何に煩わされる事もないのだから、と自身に言い聞かせてみるのだがちっとも私は納得しない。
ここに居れば煩わされる事もない?
煩わしいって何が?
カルヴィナ。
カルヴィナ。
俺の夜露。
どうして私を夜露と呼ばった声が蘇るのだろう?
涙が溢れ視界がぼやけるまま、歩き続ける。
・。・:*:・。・:*:・。・:*:・。:・。・:*:・。・
『大丈夫?』
気が付けば左手を温かく包まれていた。
小さな手のひらだ。でも伝わってくるものは大きい。
『大丈夫』
心配そうに見上げてくる女の子に頷いてみせる。
杖を突き、左手は握られているから涙は拭えないから、強く瞬く。
『そう、良かったわ。じゃあ行きましょう』
私はまた頷いて見せた。
・。・:*:・。・:*:・。・:*:・。:・。・:*:・。・
