大地主と大魔女の娘



巫女王様の部屋を後にする。

 スレン様もあの後、すぐに出ていってしまった。

 その背を見送った巫女王様はひどく消耗したように見えた。

 弱々しく微笑むと少し横になっていいか、と仰ったので一も二もなく頷いた。

 キーラを呼び、事の次第を伝えて後は任せる。


「どうぞお休み下さい。失礼します」


 私にも誰か付ける、という声を振り切るように部屋を出た。


 一人で考えたかった。


「契約」

「スレン様を縛り付ける」

「今度こそ解放してくれる巫女王を」

「真の相手では無い」

 巫女王様とスレン様のやり取りで拾った言葉たちが、頭の中をぐるぐると回る。

 何か大切なものを見落としているのではなかろうか?

 私こそが次代の巫女王と相応しいという、その理由……。

 答えは出てこない。だからこそ、いい知れぬ不安だけが湧き上がってくる。

 私はこのまま、ここに居ていいのだろうか?

「……っ!?」

 蓋をしようとしても浮かび上がって来るのは、否定的なものばかりだった。

 そんなはずはない、ここに居れば私は何に煩わされる事もないのだから、と自身に言い聞かせてみるのだがちっとも私は納得しない。

 ここに居れば煩わされる事もない?

 煩わしいって何が?


 カルヴィナ。

 カルヴィナ。

 俺の夜露。

 どうして私を夜露と呼ばった声が蘇るのだろう?

 涙が溢れ視界がぼやけるまま、歩き続ける。


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『大丈夫?』


 気が付けば左手を温かく包まれていた。

 小さな手のひらだ。でも伝わってくるものは大きい。

『大丈夫』

 心配そうに見上げてくる女の子に頷いてみせる。

 杖を突き、左手は握られているから涙は拭えないから、強く瞬く。

『そう、良かったわ。じゃあ行きましょう』

 私はまた頷いて見せた。


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