「君は……。」
「見くびらないでいただきたいわ、スレン。貴方と共にずっとあった私を」
「あった、だ何て。まだ終わっちゃいない」
「そうよ。私は見極めねばならないわ。今度こそ、貴方を解放してくれる巫女王を見届けたいわ」
「何を言っているんだよ」
「大事な事だから。私は怯えていたわ。貴方が私から去ってしまうとしたら、
どうしたらいい? ずっとそう心配し続けていた。
貴方を本当に思いやっているのなら、
もっと違うものが得られたかもしれないのに。
その事だけを悔やんでいるの。この最後の時を目前にして、
それだけが心残りよ」
「何を言っているのか、僕にはわからない」
「貴方を縛り付ける契約のことよ、スレン」
「あなたは自由であってこそ、その力を遺憾無く発揮できるというのに。ごめんなさいね。私達の都合でそれを奪ってしまって」
「ちがう。最初は無理やりだと思った。だけども、今は違うと言える。僕は自ら囚われたに過ぎない。巻き込まれているのは君たち、乙女の方だ! だから、フルルこそ相応しいのじゃないか!」
「いつの間に嘘を覚えたの、スレン?」
「いつの間に嘘を覚えたのかだって? 嘘など、僕は……!」
驚いたように片頬に手を当てながら、スレン様は呻いた。
強く否定しかけたものの、そのまま尋ね返した。
「僕が嘘をついているって言うの?」
「そうよ、スレン。本当はあなただって気がついているでしょう? エイメが真の相手では無いことくらい」
スレン様の動きが止まる。
呼吸すら忘れたように、瞬きひとつしない。
「スレン様?」
恐る恐る声を掛けると、スレン様は手で膝を叩いて、のけぞった。
それから勢い良く立ち上がると、笑い声を上げた。
「あはははは! 聞いたかい、フルル? 僕が! この僕が嘘をつく事を覚えたって!? はははははははは!」
スレン様は本当におかしそうに笑った。
その事に寒気を覚えずにはいられなかった。
「ねえ! 僕は散々、君たちはどうして嘘をつく生きもの何だろうって言ってきた。
言い続けてきたんだよ。自分の心にどうして素直に従えないんだろうって、
疑問にしか思わないでいた僕が! ははは! はははははははは!」
ひとしきりスレン様は笑った。笑い続けた。
「スレン……。」
「だとしたら君たちのせいだよ。君みたいに生き急ぐ者たちの、せいだ」
緑の眼差しが、巫女王様を真っ直ぐに射抜いていた。
