ところが真夜中、キィン! という金属音が聞こえてくるようになった。
昼間もしているらしいのだが、やはり夜というのは静かなのだろう。
しかし今までこんな事など無かった。音の正体に見当も付かない。
困惑しながらも、子供たちをあやしながら寝かしつけようと苦心する。
「ぅわぁああああん! 怖いー!」
「怖くないよ。大丈夫だよ」
「能力者」と呼ばれる子供達の五感は敏感だ。
しかもそれ以上に鋭く反応する感性を持ち合わせているのだから、なおさらだった。
小さい子が泣き出すと、それにつられて他の子も泣き出す。
でも中にはぐっと堪えて泣かないようにしている子たちもいるのだ。
どうあっても痛々しい。
「怖いよ――!」
「怖くないよ、ここにいれば大丈夫だから。ね?」
「やだやだ! こわい――!!」
恐怖は伝染してゆく。私ひとりの腕では抱きしめきれない。なだめようもない。
そんな夜も三日目を迎えている。どうしたものかと途方に暮れた。
ふいに頬を冷たい風が撫でた。
振り返ると扉の隙間から、小さな女の子が覗いていた。
まばゆい金の髪が闇の中から滑り込んできた。蝋燭の頼りない明かりの中でも輝く緑の瞳。
「……っ!?」
私は言葉を失うしか無かった。
にこにこしながら女の子は近寄ってきた。
ここに集まっている子達と何ら変わりない見かけなのに、女の子は落ち着き払っている。
「こんばんわ。泣いている子はだぁれ?」
間違いない。あの時の、お祭りの日に訪ねてきてくれた女の子だ。
神殿の子だったのか。
それならば説明の付かないでいた多くの事にも、納得が行く。
幼い眼差しの注目が集まる中、女の子は歩み寄ってきた。火を灯したままのランプを片手に持っている。
この子は暗闇が怖くはないのだろうか? こんなに小さな子が?
その事に違和感を覚えずにはいられない。驚きのあまり泣き止んだミリアンヌを強く抱きしめた。
「こんばんわ」
「……こんばんわ」
どうにか声を絞り出す。乾いた声しか出なかった。
「少し、うるさいわよね? とてもじゃないけど寝付けやしない」
そう言ってみんなを見渡した。皆、息をのんで見守る。
「ねえ、エイメ。大会が近いからといっても少々、時間が問題だわ。そう思わない?」
「大会?」
「そうよ。知らないの? あなたのための大会なのに」
「知らないわ」
私は力なく首を横に振るしか無かった。
「そう。知らされてなかったのね。もうじき剣術を競う大会があるの。だからよ。騎士達が遅くまで訓練しているの。ぶつかり合う剣の叫びがここまで届くのよ。それだけならまだしも、ねえ?」
――騎士たちの想いまでもが響きわたるから。
女の子が唇を動かさないままで、そう伝えてきた。
私は曖昧に頷くしか出来ないでいる。
「見に行ってお願いしてみようよ、エイメ。子供たちが怯えてしまうので、どうか遅い時間の訓練はお控えくださいって」
もちろん異論はない。けれどもすぐさま賛同することは出来なかった。
「あなたは……!?」
女の子は静かに微笑んで見せるだけだった。
