「力が使われたね。シオンだ。あちらのようだよ、団長」
ほどなくして駆けつける。
そこは中造りの庭と呼ばれる場所だった。
巫女たちの居住所と男どもの宿舎とのちょうど、中間にある。
巫女たちはこれ以上踏み込まないようにとするし、それは俺たちも一緒だ。
もっとも、この許される境界ぎりぎりで出会いを期待する者もいるようだが。
既にシオンは術の最中のようだった。
その様子に目を奪われる。
見つけた。
「……っ!」
「……。」
レメアーノは思わず息をのんだようだ。
俺は言葉もなく、ただ目を疑った。
めあての少女は獣と寄り添っていた。
シオンは呼びかけに応えない獣を取り戻そうと、今一度、聖句を試みているのだろう。
ただならない雰囲気を察したのか、少女は獣を背に庇っていた。
やがて獣は勝ち誇ったように宣言した。
『もう効かぬ!』
跳ねるように後ろ足で立ち上がって見せる。
その勢いのまま、少女へと甘えて身体をすり寄せた。
まるで聖句を振り切れたのは、少女のおかげだとでも言いたげだった。
大きな体で盛大に甘え、少女の髪を結わうリボンにイタズラを仕掛ける。
術者に絶対服従であった獣は、もうどこにもいなかった。
「あなたの色が獣を魅了するのですか?」
シオンが呆然としながら、導き出した問い掛けが聞こえた。
少女は何の事か解らない、といった様子で小首をかしげてみるばかりだった。
それよりも獣との戯れが気になるのだろう。
奪われたリボンをつかんで引いている。
そんな少女にシオンは性懲りもなく、同じ質問を繰り返した。
「あなたの、色が……。獣の心を惹きつけるのですか?」
『ふぉれだけであるか、バかァめ』
獣の言う通りだ。
