大地主と大魔女の娘



 コツ、コツ、コツン、と杖の打つ音を聞きながらじっと見守っていると、おじいさんは私の前に立った。


「驚かせたようですまなかったね、お嬢さん。今日、神殿にあがったばかりかな?」

「はい」



 目尻のシワを寄せて、おじいさんは優しい声で尋ねてくれた。


 頷くと、そぉっと手をかざして頭を撫でてもくれた。



「さて、シオン」



 うって変わって、おっかない様子でおじいさんは振り返った。


「言うてみろ、シオン。貴様は何故そのような物言いをした?」

 おじいさんはとんでもない迫力だった。

 杖の先を首筋に突きつけると「言うてみろ」と、繰り返した。

 私に向けるような気遣いは微塵もなく、そこにはただただ、糾弾だけがある。

 それにちょっと目をそらしてから、シオンと呼ばれた若い人は向き合った。


「ここが部外者以外立ち入り禁止の、聖なる間だからだ。結界を揺るがす気配がしたから来てみれば、この娘が勝手に入り込んでいた」


「勝手に、のう? シオン、この間はおいそれと勝手に入れる作りであったか?」


「……だからおかしいと思って駆けつけたら、コイツが」


 ジロリと見下ろされて、思わず頭を下げた。

 その途端、おじいさんが持っていた杖を振り上げて、男の人の腰を打った。

「いっ……! 何をするんだ、長!」


「バカ造!!」

「何だよ、そのバカ造って!」

「ぃやかましい! 若くて考えの足りん奴にはこれで充分だ、アホウ!!」


 おじいさんはバシバシと容赦なく、なおも打ち込んだ。


「申し訳、ありません、あの、ここに居てはいけなかったのですね。すみません」


 止めたくて慌てて言い募ると、おじいさんは腕を振り上げるのをやめてくれた。


「お嬢、庇うことはないぞ。だが、その優しさに免じてこの辺にしておいてやろう」

「ありがとうございます」

「その言葉はシオンから聞きたいもんじゃな。ところで、お嬢さんはどうしてここに居たのだね?」

「えっと、連れてこられたのです。ここで待つようにって言われて」

「誰だ? 神殿の者かな?」

「はい」

「誰かはわかるかね?」


「スレン様、です」


 言っていいものかどうか悩んだが、おじいさんの迫力ある様子におずおずと答えていた。

 優しそうな瞳に鋭い光が見えた気がした。


「スレン、じゃと?」


 おじいさんは目を見開いてから、再び杖を振り上げた。


「いっ!」

「長!」

「痛ぇ!」


 バシ! バシ! バシ! とそれは素早く、目の前の若者三人の腰を杖で打ち付けると叫んだ。


「バカ共!! ここへ直れ。即刻、こちらの嬢様に非礼をお詫びしろ!!」