大地主と大魔女の娘



 
 どうしよう。

 何やら大ごとになってきた……。

「そ、それでは、失礼いたします!」

 不必要なくらい、声を張り上げてみた。


 これくらいしか強がることが出来ないのが情けないが、泣いて怯えるよりはずっといい。


 意を決して、いざ人ごみへ向かおうと、一歩を踏み込んだ。


 ひるんでいる場合ではない。


 次はあの好奇心いっぱいの人たちに、そこを通して下さいと言わねばならないのだ。

 一歩、二歩、三歩と進んだ所で、人だかりがまたざわめく。

 それが皆こちらにではなく、扉の向こう側に対してのようだった。

 次のもう一歩をためらっていると、大きな声がその場に響き渡った。

 それに続いてカタン! と何かを打ち据えたかのような音も、場を諌めてしまった。


「何事だ! 落ち着かんか、若造ども!!」


 太く、落ち着いた声が響いた途端、静寂が戻る。

 戸口に群がっていた男の人たちが、礼儀正しく両脇に整列した。

 皆、姿勢を正して、右手を胸に当てている。

 その間を、一言で皆を従わせた声の主が通り、現れた。


 姿を現したその人は、少しだけ私よりも目線が低かった。

 背が低いのではなく、ほんの少し腰を曲げて、杖を付いているせいだ。

 彼もまた、片方の足を引きずるようにしながら、こちらへと向かってくる。


 白いものが大半の髪とたくさん寄ったシワが、彼を高齢だと物語っていた。