リディアンナ様に手を引かれながら、ゆっくりと進む。
お屋敷自体は石造りなのは、地主様の所と変わりがない。
それでも、どことなく柔らかな雰囲気に包まれている。
使われている石の色が、白っぽいせいだろうか。
威厳はあっても上品で、気後れしてしまうのは、あちらと変わりがないけれど。
気取りの全くない気さくなジルナ様や、リディアンナ様から感じるものと一緒だと思う。
陽の光がたっぷりと差し込む廊下を渡る。
眩しくて目を細めてしまう。
温かさに包まれて、そここに置かれた彫像から、まるで微笑みかけてくれているかのよう。
そう感じるから、不思議なものだ。
住んでいる人の雰囲気が、そのまま家に表れるものなのだなぁ、と改めて感心しながら眺め回した。
その間もリディアンナ様は手を引いて、ゆっくりゆっくり私の歩みに合わせてくれた。
言葉数も少なく、慎重に。
「綺麗な女神様よね。デルメティア様よ」
そうやって時折、私が興味を示した物に、註釈をくれるくらいだった。
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やがて手のひらから伝わってくる緊張感に、きょろきょろするのを止めて、一歩先ゆく彼女を見つめた。
目的はジルナ様へのご訪問のはずだ。
綺麗だけれど、とても気さくなジルナ様。
ずっとお会いしていない分、私も何だか緊張してきた。
でも、リディアンナ様にとってはお母様だ。
緊張を強いられる事なんて、あるのだろうか?
そんな違和感を感じたが、黙って付いてきた。
「こちらよ」
そう言って扉に手をかけた途端、緊張感が一気に高まった。
思わずリディアンナ様の手を強く握り返していた。
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来訪を告げると、微かに返事が聞こえた。
リディアンナ様に引かれるまま、中に進む。
「お母様、カルヴィナが遊びに来てくれたわ」
「ああ! カルヴィナ、よく来てくれたわ。お久しぶりね、元気だったかしら?」
ジルナ様は椅子から立ち上がると、両手を広げて迎え入れてくれた。
「はい。ありがとうございます。あの、その、ジルナ様は、お加減はいかがですか?」
「大丈夫。とても落ち着いたわ。今日は色々聞かせてちょうだいね」
「はい」
「おいしいお菓子とお茶があるのよ」
そう微笑みながら、ジルナ様が茶器に手を伸ばした。
