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門は開かれており、そこにリディアンナ様の姿があった。
「ようこそ、カルヴィナ。よく来て下さったわ。お母様も待っているのよ!」
待ちかねた様子で、大きく手を振って出迎えてくれる。
「リディ、じゃあまた後でね」
スレン様は私を下ろして杖を持たせると、すぐに馬へと跨った。
「スレン様はお帰りになるの?」
「そう。これでも一応まだ勤めの最中。抜け出してきたんだ。レオナルと一緒にね」
そこでスレン様はニヤリと笑いながら、私を見て言った。
「あら。スレン様はいつもの事でしょうに、叔父様まで? 余程の緊急事態でしたのね」
「ひどいや、リディ。でもその通り」
さり気なく切り返すリディアンナ様に、スレン様は肩をすくめて見せる。
二人は年の差もずい分あるのに、何だか対等だ。
改めてリディアンナ様をすごいと思う。
とても頭が良くて、思慮深い。
物怖じせず堂々としてらして、やはり血筋による所もあるのだろうかと思う。
そこで少々、置いてけぼりをくらったような気持ちになるのは、何故なのだろう。
ちっぴり居心地悪く感じてしまう。
そんな失礼な思いが伝わってしまいませんようにと、努めて大人しくしていた。
「緊急ねぇ? そのようですわね。叔父様ったら」
「わあ。姪っ子にまでそんな風にため息つかれるなんて、レオナルってば立つ瀬なし」
「いつもの叔父様らしくは無いと感じるけども、そんな時もあるものなのでしょう?」
「まぁね。いい傾向だと思う」
そう神妙に締めくくるスレン様に、リディアンナ様も頷く。
「でしたらスレン様。叔父様の分までしっかりお務めしてらしてね。リディアンナは応援しております。さ、カルヴィナ行きましょう」
「はい、リディアンナ様。スレン様、お世話になりました事、感謝いたします」
我ながら声にまったく張りがなかった。
沈んでいるのが見事に現れている。
「大丈夫だよ。何も心配いらない。レオナルは必ず迎えにきてくれるよ。ふくれっ面も可愛いとしか思ってないよ。レオナルは今、我が身の春を噛み締めて有頂天のはず。フルルに嫉妬してもらえて、やにさがっていたじゃないか!」
「ええ?」
「大丈夫。君の嫉妬なんか、ただ子猫が毛を逆立てているのと何ら変わりがない」
その程度の扱いなのか。
そしてスレン様は相変わらず、私を励ましたいのか貶したいのか。
一体どちらなんだと思わずにはいられない。
リディアンナ様はといえば何も仰らず、ただただ、にこにこしている。
正直、何か声を掛けてもらえた方が楽な気がした。
二人で、スレン様が見えなくなるまで、門の所で見送った。
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「カルヴィナ。少し歩くけどいいかしら? 我が家の庭園もそれはいいものよ」
リディアンナ様は微笑むと、私の手を取って歩きだした。
