大地主と大魔女の娘


嫌だ。

 何もかもが嫌になる。

 努めて私の機嫌を取るような話し方をする、地主様にイライラする。

 本当は私の事を怒鳴りたいだろうに、それを抑えつけてくれている。

 それくらい、私にだって解る。


 彼ほどの人が、取るに足りない小娘の機嫌を取ろうとするなんて。


 ものすごく、意地悪な気持ちが溢れて止まらない。


 私はずるい。

 地主様が大声を出さないようにしてくれる、その訳を知っている。

 そこにつけ込むような態度を取っている自覚はあった。

 でも、止められない。


 ぎゅっとスレン様に抱きついて、一息に言い放った。


「地主様。私はジルナ様のお見舞いに行くのです。ですからそこを通して下さい」


 邪魔者は居なくなるから、お二人でゆっくり話し合えばいい。


 邪魔者。それは私の事に他ならない。

 言っていて本当に涙がこぼれそうだった。

 元から私は部外者だ。

 いつからこんなに、おかしな勘違いをするようになったのだろう。

 それもこれも全部、地主様の私への過ぎる扱いのせいだ。

 そんな恨みで自分を奮い立たせて、地主様を見つめる。


 視線が絡み合う。

 それから思いっきり顔を背けてやろうと思った。

 だが先に、地主様から目を逸らされてしまった。

 それくらいで傷ついてしまう自分に、もう説明がつかない。


 地主様は訳が分からない、とでも言いたげな様子だった。

 私にだって訳が分からない。


 それから地主様は口元を隠すようにして、何か呟いたが聞き取れない。

 背けられた横顔は、少し赤らんでいるように見えた。


 この顔を見るのは二回目だ。


 狩りに出かける前に、笑いかけたあの時だ。

 あの時に向けた笑顔は、意地悪な気持ちからのものだった。

 今だってそうだ。

 私は嫌な子に成り下がっている。

 それが滑稽(こっけい)だと、呆れられているのかもしれない。


「……わかった」


 そう呟くと、地主様は道を譲った。

 通して欲しいと頼んで、それが聞き入れられたはずなのに、私の心は重みを増した。

 引き止めてくれるかもしれないと、期待していたのだ。

 そんな淡い期待も見事に裏切られ、自分を卑しいと思う気持ちが強まる。