「私、猫の子じゃありません……。」
ちょっとだけむっとしたので、頑張って言い返してみた。
変に顔にも体にも力が入って、声も裏返ってしまった。
とてもではないが毅然とはほど遠い。
一瞬、驚いたように瞳を見開かれて、まじまじと見つめられてしまった。
だが、それも本当に一瞬だった。
次の瞬間には抱きつかれていた。
「可愛い!」
ええと。
どうしたらいいのだろう。
ともかく。
もしかしたら、この方はスレン様と血縁の方かもしれないとだけ思った。
「あの、あのあの、あの……?」
なんだか泣き出してしまいそうになった。
それは、この女性が押し殺しているであろうものが、静かに伝わってくるから。
でも振りほどいたり、突き放したりなんかはしない。
しちゃいけない。きっと傷つけてしまうから。
そんなのは嫌だった。
だから、この方が自分から手を放してくれるのを待つ。
風が吹き抜けてゆく。
どれくらい、そうしていたのだろうか。
そんなに長い時間では無かったはずだ。
でも時間が留まったかのように、ゆっくりと流れたように感じた。
「あの?」
「ああ、癒されるわ」
そう言うと女性は私の後ろ頭を撫でた。
それから、ゆっくりと腕を解いてくれた。
「疲れたときは、可愛い子猫ちゃんを愛でるに限るわ」
さらりとかつ、しみじみ言われた言葉に、この方は間違いなくスレン様と同族だと思った。
さり気なく人の事を見下す辺りが。
「……。」
私、猫の子じゃないもの。
そんな言葉は言っても無駄な気がしたから、黙ることにする。
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「そんなお顔しないでちょうだい、子猫ちゃん」
そんな顔って、どんな顔の事を言っているのだろう。
前に地主様からも言われてしまった事がある。
そんなに無礼な顔つきを見せているのだろうか。
「そんな顔って、」
「ますます、いじめたくなるから」
思い切って尋ねようとしたら、声がかぶった。
――やっぱり、この仕打ちは意地悪だったようだ。
