森に帰ると必ず……。
地主様の腕の中に閉じ込められてしまう。
そのまま、ぎゅうっとされて苦しくなって、助けを求めて顔を上げる。
そうなったら、罠にはめられたも同然だ。
優しく、なだめられるようにこめかみや頬に、唇が押し当てられるのだ――。
「ん、あの、やぁ」
「可愛い」
抵抗虚しく。
もとより私の抵抗なんて、あっても無いようなものだろう。
それに地主様にしてみたら、森に連れて来てやったのだからこれくらい寄こせと言っているような。
私は地主様の所有物くらいに思われているような。
何となく伝わってくるものに、恐れおののくしかない。
そのことが私を悲しくさせる。
どうやら男の人という生き物は、女の肌のぬくもりを求めるものらしい。
うっすら聞き及んだ事が導き出した答えがそれだ。
胸が痛くなる。
そっと深くを探り当てようとする動きから逃れたくて、頭を振れば執拗に追い詰められてしまう。
「ん……やぁ」
触れ合うだけでは物足りない。
もっともっともっともっと――。
そんな想いが伝わってくる。
もっと?
これ以上、どうしたらいいのだろう。
苦しくて息が上がる。
無意識の内に涙が溢れる。
しゃくりあげると、優しいけれども怖い指にあやされる。
どう怖いのかというと……。
上手くは言い表せない。
ただ確かなのは、私から一切の抵抗を封じてしまうという事だ。
抗おうという気さえも。
そうして耳元に囁き込まれるのだ。
「カルヴィナ。おまえは俺に赤い石の腕輪をくれたのではなかったのか?」
覚えなどないと言い張れたら、どんなにいいか。
何も言えなくなってしまう。
ただ、胸だけが張り裂けそうになる。
ぎゅうぎゅうに何か詰め込まれて、それが勢い良く内側から膨れ上がるかのような。
圧迫感がたまらなく苦しい。
「森に行く」という言葉に頷けば、それはこういった事を許したと言っているも同然になるらしい。
それに気がついてからは、怖くなって頷けなくなってしまった。