大地主と大魔女の娘


スレン様の正装姿に、そんな事をつらつらと考えていた。


 この国を代表する御方に仕えておきながら、地主様は何を考えているのだろう?


 今まであんまりにも遠い話すぎて、いまいち掴みきれないでいたが、そうも言っていられない。


 私に構っていたせいで、何か大切なお役目を放棄する気だとしたら……。


 地主様はどうかしている。


「レオナルときたらさぁ。フルルを見たとたん、さらって行っちゃったでしょ。森の娘を自分の元へとさ。だから僕は追いかけて、様子を見たんだ。わざと意地の悪い言葉をぶつけてね」


 何故、そんな必要があるのか。

 もちろん私には解らなかった。

 スレン様はお構いなしで続ける。


「そうしたら案の定。つまらないプライドからフルルをこき下ろした。聞いていたよね?」


 はい、と。


 どうにか答えた。

 そんな答えも風にさらわれて、遥か後方だ。


 思わず地主様に届いてくれるなと、祈らずにはいられない。

 もちろん耳に届くようなものではないと知ってはいるが、このわだかまった想いが礫(つぶて)になってぶつかってしまう事を恐れた。

 風というものは何もかも、さらって届けるものだから。

 目に映らないものなら、なおさらだ。



 ぎゅっと目をつぶった。


 みっともないカラス娘。

 貧相な娘。

 しかも足を引きずって歩く。


 いくらか時間が経ってくれたおかげで、はっきりとその言葉は思い出せない。

 だがその分、言われた言葉の指す意味合いだけが凝縮されて蘇るのだ。

 要点だけを突き詰めて、私のことを何という風に捉えているのか。

 それだけは忘れられない。

 何より、忘れてはならないと自分自身を諌めてもいる。


 そういえば――地主様は追いかけて来てくれているのだろうか?


 ふとよぎった考えに、自分自身の浅ましさに嫌気がさした。

 あれだけ地主様を拒んでおきながら、いざという時は彼の姿を求めてしまう何て。

 あれほど置いて立ち去って欲しいと願っていたくせに。

 いつ、地主様から愛想をつかされてもおかしくないのだ。


 怖くて後ろを振り返ることも、スレン様にも尋ねることも出来ない。


 私は、自分勝手な娘に違いない。


 あんなに真剣な眼差しの地主様を、突き放すようなマネをした。

 そうしてスレン様の手を取ったのだ。

 あの時、彼はどんな目で私を見ていたのだろうか。

 胸が痛んだ。


「自分のプライドの方を優先するヤツに、フルルを任せて何ておけないよ。だから、フルルが出て行くように仕向けたよ。何でわかるのかって? だって君。そんなに大人しくないもの。弱っていたけど、何かしら対処しようとするでしょ。大魔女の娘だものね」