大地主と大魔女の娘


 「しかしフルルはやるねぇ。あのレオナルが形無しだよ」

 間延びした声に感心が含まれている。

 それに合わせるかのように、軽快に進む馬の足音が、また妙な調子をつけた。


「君の出した条件を呑んで大人しくしているものね。あの、独占欲の塊がさぁ」


 あの、でスレン様は顎をしゃくって、後ろを示した。

 少し離れて地主様も馬に乗り、私たちの後に続いている。

 私は身を乗り出す訳にもいかず、ただ追いかけてくる蹄の音でそれを確認するだけだ。


「……。」


 条件なんて出した覚えがない。

 ただ、地主様と一緒に戻るのは嫌だと言っただけだ。


 どう答えようもなくて、微かに首を横に振ってみたり曖昧に頷いてみたりした。

 そのまま首を傾げてもみた。


 どうして私はスレン様と一緒に馬に乗っているのだろう?


 ほんの数刻前までは思いもしなかった状況だ。


 頭を動かし過ぎた。

 ずれ落ちたショールをかぶり直す。


 地主様とはまた違った大きな手が、私を抱え直す。

 その手の持ち主をそっとうかがった。


 線の細そうなスレン様だけど、やっぱり男の人だなって思った。


「ん? 何なに? フルル。僕に見とれちゃった?」

「いいえ」

「何だよぉ」


 即座に答えると、ふてくされたような返事をされた。


 スレン様の馬は白馬だ。

 何でも「僕の持つ印象にピッタリだから」だそうだ。

 よく理解できないが、確かにそうだなとも思える部分はあった。

 ただし、黙って真面目なお顔をされていれば、という条件付きでだ。

 つくづく残念な気がする。


 そう思ったがわざわざ伝える訳もない。


 黙って終わらせようとしたら、スレン様はにっこり笑った。


「フルルの目は口ほどにモノを言ってくれるね」

「……。」


 何だろう。

 今の笑い方は、あの初めてあった日に見た笑い方そのままだった。

 背筋がざわざわしてきた。


「ふふ。やっぱりフルルは僕たちと一緒においでよ? ね。それがいい」


 そう一息に言い切ると、スレン様は腕に力を込めて私を抱え直し、馬の腹を蹴った。


「はっ!!」


 体が大きく揺れて、風が強くなる。


 はははと豪快に笑い声を上げながら、スレン様は馬を疾走させるべく体勢をとったのが分かった。


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「スレン!? 待て!」


 異常に気が付いた地主様が、大声で呼び止める。


「よしきた! 振り切ってやろう」


 そう宣言した通り、スレン様はより一層早く馬を走らせた。