大地主と大魔女の娘


 それはいくらなんでも、いけない気がする。

 地主様の足を引っ張る何て、さすがに申し訳ない。


「フルル! 出てきてくれないとレオナルの奴は、絶対、動かないよ。それで後からリディアンナとジルナ様から死ぬほど責められるよ! だから、許してやって――!!」


「レオナル! お前もどうにかしろ。焦れ! 焦りを見せろ! せっかく築き上げてきた信頼を失う気か?」

「カルヴィナの信頼なら、もう失っている」

「そっちもそうだけど! そうじゃないー!! 神殿の護衛騎士団長が不在で済むか」

「オマエがいるだろう」

「~~っ! 助けてフルル! 頼むから、出てきて一緒に帰ってやってくれ。今、神殿の方も大事な時なんだよ。それなのに、レオナルの奴、お飾りの立場の僕に重労働を押し付けるんだよ」

「オマエにも自覚はあるんだな。だったら飾りの立場らしく、たまには必死で取り繕って場を持たせてみろ」

「八つ当たり反対!」


 扉の向こうでは、スレン様と地主様の言い争いに移行していった。


 今聞いたスレン様の話しは切羽詰っていた。

 とてもじゃないが嘘だとは思えない。


「……。」


 せっかく築き上げてきた信頼を失う?

 地主様が私に構っていたせいで?


 そんなことは、あってはならない。

 地主様ご自身が何よりもご存知だろうに。

 いけない! これ以上、意地を張っている場合ではなさそうだ。


 震える指先で錠を外す。

 カチャリと控えめな音が響いた。


 恐る恐る扉を押し開ける。


「フルル!」

「カルヴィナ」


 何て素早い動きの出来る人たちなのだろう。

 思わずまた扉を閉めかけたのだが、許されなかった。

 スレン様は手どころか足まで隙間に挟み込んでいたからだ。

 そこに地主様も加わっては、もう何の抵抗も出来なかった。

 地主様が大きく扉を開け放つと、支えを失ってよろめいてしまった。

 すかさず、スレン様に腕を掴まれ引き寄せられる。


「フルルー! 捕まえたっ。捕獲っ! ……睨んでも代わってやらないよ」


 一瞬もがいて助けを求めそうになったが、それもどうかと堪えた。

 空をさ迷わせた腕は、スレン様に縋らせる。

 ぎゅ、と強くスレン様の袖口を引っ張った。

 あんまり密着しないで欲しいという抗議を込めて。


 スレン様の影から地主様と目があった途端、一瞬で体が強ばった。

 怖くなって、すぐ視線をそらしてしまった。

 また胸が痛くなる。