大地主と大魔女の娘


 それから二人ともちゃんと服を着て、静かに食事をとった。

 焼いたお魚と、残っていたパンとで。


 魚は地主様が私が寝ている間に、仕掛けた罠を引き上げたそうだ。

 いつのまにかそんな事までこなしてしまう地主様は、やっぱりすごいと感心してしまう。


 せめてと食後のお茶をいれようと立ち上がると、やんわりと制された。


「杖が無いだろう? 大人しくしていろ」


 確かにいつも使っている物は見当たらなかった。

 広場に忘れて来てしまったのだ。

 後で取りにいかなければ。

 そう考えながら「いいえ」と、首を振って見せた。

 少しだけ歩いて、暖炉の脇に立てかけて置いた予備の杖があるのだと見せた。

 私の手に刺が刺さってしまわないようにと、丁寧に持ち手の部分が削ってある。

 それでもいくらか手応えが有りすぎて、掴みにくいのだが、うんと頑丈な太さの杖ではある。


 私はこれで一人で動けるのだと主張する。


「予備を作って貰ったのです」

「作って貰った?」

「はい。ジェスに」


 頷いて答える。


 その間に、体が浮いて椅子に腰掛けさせられていた。


「え? え!?」


 何事かと目を見開く。

 気が付けば手にした杖は地主様の手にあった。

 返して欲しいと、手を伸ばしたが無視された。

 一体どうしたというのだろう?

 そんな風に怯えていたら、耳慣れない音が響いた。


 ――ベキィ!


 地主様は私に構うことなく、自身の腿を使って杖を真っ二つに折ってしまったのだ!


 そこにためらいは微塵も感じられなかった。


 しかもその二つを勢い付けて、放り投げられてしまった。

 暖炉の側に置いてある、薪の上にと。


 カラン……カラン……。


 無残な形となった杖が、積み上げた薪から滑り落ちて行くのを見ていた。

 何が起きたのだろう。

 一連の動きを目で追っているうちに、視界がみるみるぼやけてきた。


 地主様と目が合う。


「カルヴィナ。あの男、」


「っ、ぅ、わぁぁぁぁん!」


 私はかつてないほど大声上げて、泣き出してしまった。