大地主と大魔女の娘


 肩を揺すぶられる。

 ますます身を小さくして、固く目蓋を閉じた。


「カルヴィナ。カルヴィナ。悪かった。言い過ぎた」

「?」

「おまえをいじめすぎた。悪かった。責めたのでも怒った訳でもない。だからそんなに怯えないで欲しい。許してくれ」


 勢い良く抱き起こされる。

 慌てたように幾度も背中を撫でられた。

 そろりと目蓋を持ち上げる。


 そこでやっと自分がガクガクとおかしいくらい震えながら、涙を流している事に気が付いた。


 色々と驚きすぎて、訳が分からなくなってしまっていたようだ。


「悪かった。おまえの気持ちのこもった腕輪はありがたく受け取った。大事にする。だからおまえに無茶させたい訳ではない。俺が急ぎすぎたのだ。悪かった。許してくれるか?」


 そう優しく何回も謝りながら、頭を撫でてくれた。

 私が落ち着くまで、ずっと。


「地主様、あの、もう大丈夫ですから謝らないで下さい」

「カルヴィナ」

「服を着たいです、地主様」


 そう訴えると、地主様は椅子の背に掛けてあった私の服を取ってくれた。

 それだけではない。

 さも当たり前のように、私の腰に手を回して持ち上げようとした。

 その意図に焦った。


「地主様。あの、自分で自分の事くらい出来ます」


「巫女の衣装も自分で脱げなかったくせに?」


 唇の端を持ち上げて、地主様は笑みを浮かべながら言う。

 どうやら本気で責められた訳ではなさそうだ。

 からかわれたのだろうか。

「ええと。それは申し訳ありませんでした。地主様がたたんで下さったのですよ、ね?」

「そうだ」

「う……。」


 よく見れば、巫女の衣装の上に置かれているのは、神様の面だ。

 白い布地の上には、闇色が鎮座しているように思えてしまう。

 何だろう。

 どうしてこんなにも居た堪れなさが増すのだろう。


 腕や胸元の筋肉の盛り上がり方に、なるほど私など簡単に持ち上げられる訳だと納得する。

 厚みのある体はそれだけで威圧的に感じるほどだ。

 腕だって私の脚以上に太い。


 どうりで逃げられないはずだ。

 男のヒトのカラダ、だなって思った。


 改めて落ち着いてみたら、急に恥ずかしくて仕方がない。

 頬が火照ってしまう。

 きっと耳までも真っ赤だろう。


 側に落ちていた服を引き寄せて、体を隠すようにしながら、地主様をうかがった。


「着替えますね、地主様」

「ああ」


 なかなか出て行ってくれないので、まだ何か言いたいのだろうかと首を傾げた。


「あの、着替えくらい一人で出来ますよ?」

「……ああ。悪かった」


 地主様が扉を閉めてくれるまで、動かずに見守っていた。