地主様に抱きかかえられて、やぐらを降りる。

 私はといえば揺れに身体を任せながら、手のかけどころに困っていた。

 やたらと仮面を握り締めてみても、あまり何の助けにもなっていないのは分かっている。

 それでも。

 トン、トン、と地主様がひと足ごとに下りる度に、振動が伝わってくる。

 最初はそれが心地よかった。

 私の胸の鼓動と同じリズムだったから。

 でも、だんだんと早まる鼓動とは合わなくなってしまう。


 色々と意識が戻ってきているせいだと思う。


 さっき、地主様に、たくさん……。


 熱を与えられ、そして奪われた。

 それだけじゃない。熱を呼び覚まされてしまったのだと思う。

 そうして私の中でこもった熱は、地主様に吸い上げられるみたいだった。

 地主様も同じに思ったかもしれない。

 熱に浮かされながら、そんな事を思ったら自分が溶けてしまう気がした。

 そんなお互いの熱を感じながら、ただ嵐が過ぎ去ってくれるのを待った。


 もう、恥ずかしくて耐えられない。

 俯くしかない。

 そうなると、もっと彼に頬をすり寄せてしまうような格好になるしで、いたたまれない。


『どうしたんだ、カルヴィナ? 何だ。照れているのか?』


 そんな事をさらりと言われて、額にまたあたたかなものが押し付けられた。


『!!』


 私の頬は熱いなんてものじゃない。

 動じてもいない地主様に悔しさを覚えるのと同時に、こみ上げてくるのは説明のつかないもどかしさだった。

 さすがは地主様だ。こんなこと、当たり前にこなす。

 大人の男の人らしい余裕っていうものに、私はすっかり怖気ついていた。


 仮面を被ってしまう事にする。

 今度は私が外れなくなる番だったら、いい気がする。


 乙女を求める獣の視線と交わった――。

 地主様に言われた、謎かけみたいな言葉を反芻する。