大地主と大魔女の娘



 カルヴィナの指先が頬を伝う。

 まるで俺という形を確かめてるかのような、幼い好奇心に突き動かされたかのような。

 そう思うのが自然だろう。

 だがそう思いたくとも、そう思えなかった。

 どうしてか、その指先に拙いながらも色気を感じてしまうのは、俺の欲望のなせる技なのかもしれない。


 この娘は本当に理解していないのか?


 その眼差しと指先が、どれほど目の前の獣を刺激するのか、毛の先ほども考えが及ばないのか?


 潤んだ眼差しに加えて、薄く開かれた唇が強く何かを訴えてくる。

 大きくはだけた胸元もさることながら、もがいたせいで足も見えている。

 先程、俺が撫で上げた傷跡が日にさらされているのだ。


 今一度、その手触りを確かめたい――。

 温かく滑らかな、娘の手触りがすぐそこにある。

 それよりも、目の前に差し出された首筋に牙を立て、味わうべきか。


 獣は獲物のどこに食らいつくか、頭がいっぱいだ。

 それを見透かしたように、名を呼ばれた。


『シュディマライ・ヤ・エルマ?』


 なるほど。

 俺は獣だと。

 その通りだった。見抜かれたのだ。

 そう心で肯定する。


『シュディマライ・ヤ・エルマ』


 今度は確信を込めて呼ばれた気がする。

 間違いがないと。

 だから答えた。

『……真白き光』


 そうだ。俺はシュディマライ・ヤ・エルマの仮面に支配されている。


 疾風まとう暗闇という名の、ただの森の獣であった彼に。