大地主と大魔女の娘



 沈黙が怖い。

 地主様は何も仰ってはくださらない。

 仮面の奥の眼差しは何をうつしているのかも計れない。


 先ほど、地主様に言われた言葉を繰り返す。


 地主様以外に、お嫁に行けないようにするって仰った。

 もしかしたら聞き間違いかもしれない。

 だとしたら、きっと、見当違いの答え方をした。


 やぐらの天井に飾られた色とりどりの刺繍飾りが、よく見えた。

 それらからも見下ろされ、身動きが取れない。

 その事をぼんやりと思う。


 私は、今、身動きが取れない――。


 その事に衝撃を覚えるよりも、どうしてだろうかなどと疑問に思う。

 地主様に押さえ付けられているからこその、この有り様なのだが。


 地主様はどうして怒り出してしまったのだろう?

 ああ、そうか。

 私がお祭りに無理やり付き合わせて、貴重な時間を奪うようなマネをしたせいだ。


 息が詰まる。

 ふえっと、抑えきれない嗚咽が漏れた。

 慌てて唇を噛み締めて、堪えようとしても遅かった。


 ぎゅっと目蓋を閉じると、眦から涙も押し出されてしまった。


 頬をゆっくりと伝い落ちるのを感じながら、何故じぶんが泣いているのかと問いかけた。


 地主様が怖いせいもある。


 だがそれ以上に悲しいのは、他にあった。

 地主様が怒り出したのは、お祭りが楽しくなかったからかもしれない。

 そう思い当たったからだ。


 私は楽しかった。


 準備も含めて、いろいろあったけれども、すごく楽しかった。

 でも地主様はそうでなかったのかもしれない。


 仮面が外れなくなるという、説明のつかない事態になったのも、元を正せば私にあるのかもしれない。


 それなのに、魔女の娘は何の役にも立てないでいる。