ジェスが待っているから。
カルヴィナが他の男の名を呼んだ途端、俺の中で何かがブチ切れた。
やぐらを降りる理由がそれなのか?
あの男が一方的に取り付けた約束を守るために?
強烈なまでの怒りが沸き上がり、押え付ける事など不可能だった。
逃げを打つカルヴィナを捕らえると、後ろから羽交い締めにする。
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『おばあちゃん、怖いよ、助けて』
人は窮地に陥ると、自然、一番頼りにしている者に縋るものだ。
予測は付いていた。
それなのに、カルヴィナが助けを求める相手にすら嫉妬した。
これが予想外の相手だったら、自分はこの娘をどうしてしまうか予想もつかなかった。
おそらくどころか確実に、この程度では済みはしない。
力の差にモノを言わせて身も心もズタズタに引き裂いてしまったかもしれない。
後先も考えず、己の嵐をその小さな体に知らしめてやればいい。
そんな狂暴な想いに支配される。
振り払えなかった。
傷痕をたどりながら右足を撫で上げる。
『この足で踊ろうというのか?』
カルヴィナは首を振っている。
か弱く、ふるふると震え、泣きじゃくりながら。
『恨むのなら大魔女を恨むのだな。こんな男に借りを残したまま亡くなったのだから』
嫉妬でどうにかなりそうだった。
怒りのあまり、破滅的な行いをしている自覚はあった。
だが、止まらない。
『仕える主の異常時だというのに、おまえは何をしてくれた? 大魔女の娘』
