カルヴィナは菓子だけをまくより、花もまいてみるのも楽しいと判断したらしい。
たちまち、花を降らせる事に夢中になったようだ。
手のひらに慎重に花をすくうと、弧を描くように腕を空に滑らせる。
うっとりとその風に舞う様を眺めながら、花籠から降らせ続ける。
手篭の花が無くなると、せっせと大籠からかき入れる。
籠にたっぷりと用意された花に、両手を突っ込むカルヴィナの表情は恍惚としていた。
そのまま大きな籠へと、腕が埋まってしまう程に身を乗り出している。
先程の村長のせがれの熱の込められた視線も、花の感触の前には忘れ去られたようだった。
杖がないので、ふらつきながら立ち位置に戻ろうとする。
俺もそれに合わせて、さりげなく菓子を補充し、戻るときはカルヴィナの背を支えた。
先ほどニヤついていたスレンに、ほんの少しだけなら感謝してやってもいいと思えた。
いよいよ手篭の中で最後、となった。
惜しむようにゆっくりと、ていねいに菓子をまく。
カルヴィナも同じようだ。
最初の頃は景気良く舞い降らせていたのだから、おかしなものだ。
大籠いっぱいに用意された菓子も花も、意地でもまいてやらねばと思わせるに充分な量だったからだ。
それも終わる。
二人、言葉にして打ち合わせずとも、最後のひとまきは頷きあってから降らせた。
それから空になった籠を持ち上げて、底が見えるように広場を見渡した。
拍手がわき起こる。
労いの意を込められた、拍手だと思った。
それに手を振って応え、手すりから離れた。
