村長とそのせがれが、遠慮がちに進む。
息を飲み、一瞬カルヴィナに見惚れたせいだ。
そんな気配にも敏(さと)く気取る。
仮面がそれを認識した途端に、冷たく感じられた。
それはとても不快だった。
その冷たさがではなくて、カルヴィナに向けられた熱帯びた視線が。
口元を歪めてしまっていたのだろう。
俺の感情の動きに敏いカルヴィナが、怯えた眼差しを寄こした。
子供たちに抱き縋ったまま、言葉無くこちらを見上げている。
その事にひどく満足を覚える。
そうだ。
『 我 だ け を 見 て い れ ば い い 』
一瞬……。
自分が、自分ではない感覚に呑まれたような気がした。
『我だけを』
だが、その感覚におおいに同意してしまった。
カルヴィナに歩み寄る。
・。・:*:・。・:*:・。・:*:・。・:*:・。・
「と、言う訳だよ。フルル?」
スレンが全く反省のみられない口調で説明する。
「何がと、言う訳だ!」
これに怒鳴り返したのは、村長のせがれだ。
「ジェス! その面が地主様をお選びになったのだ」
村長は慌てたように、息子をたしなめた。
スレンの不興を買いたくは無いのだろう。
「親父……。くそっ!」
「今までこんな事は無かった。仮面が外れなくなる事など」
「一体、どうなっている?」
本日のカミサマ役とやらはこいつ、村長のせがれだったようだ。
物々しい黒い羽飾りの付いたマントを羽織って、仮面を取りに来たら、この騒ぎだったという訳だ。
一緒になだれ込んできた、ちび兄妹たちも心配そうに事の成り行きを見守っている。
一同が見守る中、頭をふってもみたが仮面は張り付いたように、びくともしなかった。
傾けた拍子に、仮面の耳元に付けられた紐も一緒に揺れた。
本来ならば、これを頭の後ろで結びつけて固定するのだろうに。
あらためて、事の異常さにゾッとするしかない。
「俺が訊きたい」
