大地主と大魔女の娘


 村長とそのせがれが、遠慮がちに進む。

 息を飲み、一瞬カルヴィナに見惚れたせいだ。

 そんな気配にも敏(さと)く気取る。

 仮面がそれを認識した途端に、冷たく感じられた。

 それはとても不快だった。

 その冷たさがではなくて、カルヴィナに向けられた熱帯びた視線が。


 口元を歪めてしまっていたのだろう。

 俺の感情の動きに敏いカルヴィナが、怯えた眼差しを寄こした。

 子供たちに抱き縋ったまま、言葉無くこちらを見上げている。

 その事にひどく満足を覚える。

 そうだ。


『 我 だ け を 見 て い れ ば い い 』


 一瞬……。



 自分が、自分ではない感覚に呑まれたような気がした。


『我だけを』


 だが、その感覚におおいに同意してしまった。


 カルヴィナに歩み寄る。


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「と、言う訳だよ。フルル?」


 スレンが全く反省のみられない口調で説明する。


「何がと、言う訳だ!」


 これに怒鳴り返したのは、村長のせがれだ。



「ジェス! その面が地主様をお選びになったのだ」


 村長は慌てたように、息子をたしなめた。

 スレンの不興を買いたくは無いのだろう。


「親父……。くそっ!」

「今までこんな事は無かった。仮面が外れなくなる事など」

「一体、どうなっている?」

 本日のカミサマ役とやらはこいつ、村長のせがれだったようだ。


 物々しい黒い羽飾りの付いたマントを羽織って、仮面を取りに来たら、この騒ぎだったという訳だ。


 一緒になだれ込んできた、ちび兄妹たちも心配そうに事の成り行きを見守っている。


 一同が見守る中、頭をふってもみたが仮面は張り付いたように、びくともしなかった。


 傾けた拍子に、仮面の耳元に付けられた紐も一緒に揺れた。

 本来ならば、これを頭の後ろで結びつけて固定するのだろうに。

 あらためて、事の異常さにゾッとするしかない。


「俺が訊きたい」