大地主と大魔女の娘


 「叔父様。スレン様。いい加減になさって! 今日はお祭りなのよ?」

「……。」


「だよ、レオナル?」

 リディの制止の声に我に返る事が出来た。

 それはスレンも同じだったらしく、争う気は無いのだと両手を上げた。

 睨みつけると、顎をしゃくられた。

 突放すように、奴を解放する。

「まったく。短気な叔父様で困るよね、リディ?」


「スレン様も一緒ですわ」


 リディアンナが、呆れたようにスレンに返した。


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「あの面を被るんだってさ」


 そう言いながら、壁を指差す。

 そこには獣を模した仮面があった。


「やぐらに上がっていいのは、カミサマと巫女役だけって決まりなんでしょ。いいのぉ、レオナル?」


 本日の巫女役はカルヴィナだ。


 そしてカミサマとやらの役、は?


 スレンが、唇の両端を吊り上げながら、揶揄するのを聞き流すよう務めた。

 あくまで挑発的な物言いをする奴に苛立つ。

 それは、あまり寝ていないせいもあるだろう。

 そう己で結論付ける。


「詳しいな」


「誰かさんと違って、早起きしたからね~。ねぇ、リディ? 村長さんのお話はためになったよねぇ」


 我々よりも少し高みから、見下ろしているようにも見えるそれ。


 深い闇色でありながら、静かに光沢を放っている。


 瞳の部分はくり貫かれ空洞になっているが、それがまた妙な存在感を与えている。


 面は狼の様にも見えなくもない。


 やや長めの鼻ヅラに三角に尖った耳。


 額から頬にかけて、毛並を紋様化したのであろう渦巻が彫られてある。


 仮面は口元までは覆わずに、上あごまでの造りだった。


 牙を模した細工が大小、付けられている。


「レオナルに似合いそうな禍禍しさだね」


 等と、忌々しい事をほざきながら、スレンは仮面に手を伸ばした。


「この輝かしいボクには、到底似合いそうも無い」


 スレンが呟くのと同時だった。



 視界が闇色で占められた――。