大地主と大魔女の娘


 準備をするというカルヴィナを見送った後、客間へと案内された。

 扉を開けたとたん、目に入った奴の存在に迷わず眉根を寄せる。

「何で、おまえがいるんだ。スレン?」

「つれないなー、レオナル」

「申しわけありません」

「リヒャエル」

 リヒャエルがすかさず詫びてきた。

 だが、言葉ほど悪びれた様子は感じられない。

 しかし、そこはかとなく諦めは感じられた。


「叔父様、お祭りですもの」


 祭り用にと用意してもらったのだろう。

 赤い衣装に揃いの額あてをし、同じくらい頬を赤く染めた姪が取り成す。


「リディアンナ」


「叔父様もお祭りに参加されるのでしょう? 皆も今年は地主様がいらっしゃるからって、うんと張り切ってるって。さっき、ミルルーアから聞いたわ!」


 楽しみね、とはしゃぐ姪に手を取られ、振り回された。

 いつも大人びた落ち着きを持った姪の、年相応の反応は微笑ましい。


「そうそう。この高貴な身分のボクだって、下々の者の事に興味が無い訳ではない。それに、いい機会じゃないか? ボクのような存在に心乱されるコが出てくるのも」


「おまえはもう帰れ。いますぐ!」


「嫌だなぁ、レオナル。だってさ、フルルが巫女役なんでしょ?」


「……。」


「だったら、その晴れ姿を見ないで帰るなんて、男が廃(すた)るからゴメンだね」


 こちらの様子を窺うように言う、奴の道理に拳を握り締めた。

 気取った物言いと、斜め上から見下すかのような態度に、いつも以上に腹が立つ。


 それは奴も同じなのだろう。


 いつにも増してスレンの態度は挑発的だった。


「スレン。騒ぎは起こすなよ」

「騒ぎ? 騒ぎって何さ」

「カルヴィナに構うな。それにその呼び方もやめろ」


「嫌だね」



「表に出るか?」


「何なわけ? さっきから。ボクにとってあのコは、フルル。それにフルルは、レオナルの物じゃないでしょ。指図されるいわれは無いね」


「その呼び方はやめろと言っている!」


 震えながら歩くから。


 何故そう呼ぶのか尋ねた時の、奴の答え。


 かっと頭に血が上る。

 その勢いのまま、スレンの胸倉に掴みかかった。

 締め上げる。