大地主と大魔女の娘

 
 仕度を終えて、一人控えていた。

 部屋にはたくさんの暖かな陽が、差し込んでいる。

 椅子に腰掛けながら、ぼんやりと日の光を眺めていた。

 あたたかさに、ささくれ立った心も落ち着きをいくらか取り戻している。

 光に遊ぶこまかな塵を、ただ目で追っていた。

 窓の外に広がる木々の葉が、赤く黄色く色づいている様も眺めた。

 陽射しを浴びて、艶やかに輝く赤茶色。

 その色合いに何故だか、もう二度と構わないで欲しいと願う人の面影が浮かんで、苦しくなった。


 窓の向こうから視線を引き剥がし、頭を振った。


 しっかりしなくてはいけない。


 これから、私は、大事な役目を果たさねばならないのだから。


 今日は森の神様のことだけを考えて、感謝を捧げる日。


 そっと両手を組んで祈りの形にし、唱えるべき感謝の言葉をそらんじてみる。


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『----、----、------』


 大丈夫だ。


 少し前まで、むつかしいと感じていた部分も、忘れていない。



 ふと目の前の鏡の中の自分と目が合った。


 真っ白の衣装に、お揃いのベール。


 ふちは金と銀とで飾られた、上品でありながらも、きらびやかな衣装だった。


 私の色とはあまりにも対極にある色彩をまとって、嫌でも黒い髪と瞳が目立つ。


 カラス、娘――。


 急に何もかもがやるせなくなって、俯く。


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 ふいに冷たい風が頬を撫でた。


 振り返ると、小さく扉が開いていた。



 隙間から、好奇心で溢れた瞳が覗いていた。


 にこにこしながら、小さな手を差し込む。

 そのまま、私を見詰めたまま、幼い女の子は身を滑り込ませてきた。

 金の髪にも光が降り注いでいる。

 眩しいほどだった。


 お祭りの装束なのだろう。

 深くも鮮やかな赤いスカートに、木の実が刺繍された上着にお揃いの額当てをしている。


 大変に可愛らしい。


「どうしたの? ええと、どこの家の子だったかな?」


 記憶をさらってみたが、やはり思い出せなかった。