大地主と大魔女の娘


 
 では、いつまでもこうしている気なのだろうか?

 そうだとでも答えられたら多分、私は泣き出す。

 今だって、堪えているのだ。


 体が震えだす。


「おまえが悪い。おまえが……。無防備な姿で、幻獣などと戯れたりするから」

「も、もうしわけっ……っく」

 どうにもままならない状況でまたも責められ、謝っているのにも関わらず彼は拘束を解いてはくれない。

 許す気がないに違いない。

 そう思い当たったら、涙が溢れ出してしまった。


 言葉もつまる。


 だから謝罪の言葉は飲み込んだ。


 許してくれないのならば、いくら謝っても無駄だから。

 泣き出した途端、彼の腕に力がこもった。

 苦しい――。

 胸が痛む。


 張り裂けそうだ。


 どくどくと脈打つ胸の鼓動が自分のものなのか、地主様のものなのか。

 判別つけ難い。

 涙を覚(さと)られたのだろうか。

 また強く抱き寄せられてしまった。


 痛みが重なる。


 と、いう事は痛みを訴える場所は、同じだという事だ。


 ああ、また、だ。


 ぼんやりとそう思う。


 地主様も痛みを覚えているのは、どうした事なのだろうか?


『どこか、い……痛むのですか?』


 たまらなくなって尋ねる。

 口から滑り出た言葉は、古の響きを放っていた事にも気付かないでいた。


『いいや。何故そう問うのだ? カルヴィナ』


 対する地主様も古語で返して来た。

 そこでやっと、自分が古語で問い掛けていたと気付かされた。


『地主様が痛みを訴えていらっしゃるからです』

『痛みなど、感じていない』

 嘘だ。

 これほど密着していれば、流れてくる感情をせき止めるのは難しい。

 痛い。

 呼吸をするのだって苦しいくらいに、胸が狭まる気がしてならない。


『あれは何だったのだ、カルヴィナ?』

『……。』

『おまえに真名を迫っていたな?』

『……。』

『カルヴィナ。答えろ』