大地主と大魔女の娘


 気が付けば、地主様の腕の中だった。

 慣れたはずの状況。

 心が騒ぐ。

 ちっとも慣れたり何て出来やしない。

「おまえが……悪い。あれほど鍵を閉めて休めと忠告したのに」

「し、閉めました」

 そう。

 確かに閉めて横になった。

 いったんは。

 深いため息と共に、小さく舌打ちされて、身体も心も震えた。

「掛けていないも同然だ。こうやって抜け出すのならば」

「もう、申しわけありません、でした」

 一方的に責められながらも、どうにかこうにか謝った。


 怖い。

 布一枚の隔たりがどんなに大事か。

 今、思い知った。

 地主様はいつも服の上から、私を抱きかかえた。


 当たり前だ。

 同じように抱きかかえられるにしても、生まれたままの姿の今は、恐ろしく何かが違うと思った。


 同じように背中、わき腹に通される腕の力強さは恐怖でしかない。

 肌に触れる手のひらから伝わる熱に、地主様の手はこんなに熱かったのかと思った。

 ただ、大きく力強いだけではなく。


 居心地悪く身体を捻りながら、どうにか腕で彼との距離を取ろうとした。


 例えそれが僅かであろうとも、重要だ。

 何せ隙間無く抱きしめられているせいで、私の貧弱さを彼に押し当ててしまっている。


 片方で地主様の胸元を押し返し、もう片方で胸元を隠す。


 地主様はびくともしない。


 それ所かより一層、抱き込まれてしまった。


「地主さま?」


 声が震えた。

 恐るおそる見上げたが、地主様の表情を伺う事は出来ない。

 地主様のお顔が、ぴったりと私の頭に張り付いているからだ。


 確かにこうしているお陰で、私の貧弱さを地主様の目に晒す事は無い。


 無いのだが、もっと悪い気がした。

 弾力に乏しい私の身体の線が、丸分かりではないか!


 地主様のお考えがわからない。


 私の抵抗など、始めから存在しないかのようだ。

 わずかに取れた距離もまた、背に押し当てられた手のひらに引き戻されてしまう。


「……。」


「地主様。あの、上がりましょう? 地主様が冷えてしまいます」


「……。」


「じぬしさま?」


「……だ」


「え?」


「嫌だ」


「っ!?」


 予想もしない答えに、言葉に詰まるしかなかった。