にこやかに迎え入れられて、ほっとした。
村長さんは、やっぱりあれこれと勧めてくる。
「いよいよ明日は村祭りだからね。エイメは巫女役なんだから、しっかりお食べ。ああ、無理ではなく食べきれる分だけね。この魚はわたしが釣ってきたんだよ。食事の後には甘いものも用意しているから、その分の余裕を残しておくと良い。女の子は甘いものが好きだろう?」
「はい、ありがとうございます」
恐縮してしまう。
村長さんときたら、地主様やジェスのことがまるで目に入っていないかのような様子なのだ。
もちろん、一番最初には地主様を労って、一番大きなお魚を用意していた。
でも私に色々と取り分けてくれる。
給仕をしてくれるお手伝いのおかみさんも、やや苦笑気味だ。
それでも「あらまあ、旦那様は世話焼きでらっしゃるから。遠慮はいりませんよ」と、言うだけだった。
「親父、ほどほどにしてやれ。エイメが困っている。そんなに口うるさくすると、落ち着いて食べられないだろう」
「ああ……。そうか、エイメ。遠慮はいらないからね」
そう言って、すぐ目の前に座る村長さんは目を細めた。
隣には地主様が座っているのに、村長さんは私のお魚だという方の身をほぐし始める始末だった。
まあでも、村長さんにしてみたら、私はうんと子供に見えての事なのだろうが。
地主様とジェスは口数少なく、食べる事だけに集中しているように見えた。
実際、二人の食べ方には驚かされる。
大きなお魚はすでに綺麗に骨だけになっているし、既に最初によそわれたスープは空っぽだった。
もう一杯と、お代わりがよそわれる。
「気持ちの良い食べっぷりですこと! 作るほうとしては、これほど嬉しい事はありませんよ」
おかみさんが晴れやかに笑いながら、新たに焼きたてのお魚を用意していた。
香草をまぶして焼かれたそれは、香ばしい良いにおいが湯気と共に上がっている。
「ああ、とても美味い」
「光栄ですわ、地主様にそう仰っていただけて」
私も良かったなと思って、ほっとしていた。
「エイメ? どうしたんだい? もう食べられないかな」
村長さんが手の止まった私を気使って、心配そうに尋ねてくれた。
「いいえ、あの。村長さん達にお夕食に招待してもらって、良かったなあと思ったのです」
「そうかい!」
一瞬驚いた顔をしてから、村長さんは満面の笑みを浮べて見せた。
