ココココン! と扉が音を立てた。
軽やかだが、性急さも感じられる。
来客を告げるそれに、カルヴィナは躊躇い無く扉を開けた。
「…………。」
村長のせがれが、怪訝そうに眉をひそめて立っていた。
「あの?」
「ああ、何で灯かりがこんな時間まで付いてるのかと思ったから、見に来たんだ。どうしたんだ? もうとっくに日は暮れちまっただろう? まさか、ミルアの奴、間に合わないとか泣きついたのか?」
「ううん。違うよ。明日は準備で朝早くから掛かりきりになるでしょう? だから、泊まっても良いって地主様がお許しくださったの」
「 ―― エ イ メ 」
困惑顔の青年が首を振り、こちらを責めるような眼差しを向けた。
「少しだけ、いいかい? 地主様」
顎をしゃくって促がされる。
しぶしぶ立ち上がり、表に出た。
カルヴィナが俺のためにと、やれ茶だ食事だと、忙しく立ち働いてくれていたというに。
少しだけ離れ、小声で話し始める。
――何、さも当たり前の面(ツラ)してんだよ、地主サマ?
当たり前に決まっているからだろう。
鼻で笑い、顎をそびやかし見下す。
――あんたなあ、まさかここで二人っきりでエイメと一晩過ごす気か?
そうだが。何か不都合でも?
――大有りだ!!
何。あれとは既に一緒の館に住んでいる。問題なかろう。
――広さの規模が違うだろう!
思わずといったように、青年が胸倉に掴みかかってきた。
「どうしたの? ジェス、地主様に乱暴な事しないで!」
後ろではらはらと、事の成り行きを見守っていたカルヴィナが、不安そうに叫んだ。
ちっと舌打つと、腕を解いてから「悪かった」と素直に詫びられた。
「おまえは何しに来たんだ。村長のせがれ?」
「夕食にご招待いたしますよ、地主様。親父も打ち合わせしたいと待っていますから。もちろん、エイメも一緒に」
やはり大魔女の獣よけは、きちんと働いているとは言い難いと思った。
