期待に満ちた二人の眼差しに急かされながら、朝食を終えた。

 急かされるままに、馬小屋に向う。

 そこには、馬の準備をしたリヒャエルと連れ立って、久しぶりに顔を見る甥っ子の姿があった。

「ギルムード!」

 リディアンナがいち早く声を上げた。

「や! リディ姉(ねえ)。帰ってこないから、お母様が心配して見に行けっていうから来たよ。叔父上に挨拶も兼ねてね」

 明るく人懐っこい笑みを浮べながら、巻きくせのある髪を揺らして、ギルムードが馬から降り立った。

「叔父上、ご無沙汰しておりました」

「久しぶりだな、ギルムード。元気だったか?」

「もちろん。お母様から聞いてるよ。その子が魔女の娘だね? うっわ! かわいい!」

 ギルムードは控えめに立つカルヴィナに、好奇心いっぱいの眼差しを向ける。

 甥っ子に年頃らしい恥じらいは無い。


 彼は人が好きで、社交的なタチであり、誰とでも警戒心無く打ち解けようとする。

 誰に似たのかと感心してしまう。


「そうでしょう! カルヴィナ、わたくしの弟のギルムードよ」


「はじめまして、ギルムード様」


 リディアンナからは誇らしげに紹介され、初対面にも関わらず手放しで歓迎するギルムードに、カルヴィナは恥ずかしそうにしている。


「よろしく、カルヴィナ。僕の事はギルでいいからね」

「はい。ギル様」


 緊張した様子で、素直に頷くカルヴィナの手を、ギルムードがすくい上げた。


「本当にかわいいなぁ。ねぇ、リディ。こんな妹だったら、もう一人いてもいいよな!」

「ギルムード。カルヴィナはあなたより年上よ。失礼だわ」

「え? そうなんだ。リディ姉と同じくらい?」

 ギルムードは、リディアンナよりも一つ年下なだけである。

「……。」


「ギルムード。カルヴィナは、おまえよりも五つ年上の十七歳だ」


「ええ!? ごめん、カルヴィナ。細いし小さいからさ、てっきり年下かと思った。でも、俺! 五つの年の差なんて気にしないから」


「え? ええと?」

 勢い良く言い放つギルムードに、カルヴィナは首を傾げるばかりだった。



 そんな甥っ子の様子に、姉の夫となった義兄の姿が重なる。


 ・。・:*:・。・:*:・。・:*:・。・:*:・。・:*:・。・


 その後、話を聞いたギルムードも、自分も一緒に行くと言い出した。

 そしてカルヴィナを、甥っ子が馬に乗せて行くとも言い出す。

 そこまでは予想通りだった。


 何故かそこで、昨晩さんざん苛まれた、不可解な不快感が蘇る。

「カルヴィナ。俺の馬に乗せてあげるから、一緒におしゃべりしながら行こう。いいだろう?」

 俺にも視線で問いながら、既にギルムードはカルヴィナに手を差し出していた。

「はい。おねがいします、ギル様」


 その申し出に、カルヴィナは二つ返事で頷く。



 そんな提案を無視し、さっさとカルヴィナを自分の馬に乗せる俺自身が、一番不可解だった