「いいなずけ?」
魔女の言葉に思い当たる所は無い。
どうやら古語ではないようだ、という察しが付く。
では、何だろう?
考え込んでしまう。
はたと気が付けば地主様の腕の中だった。
何だろう。
最近、当たり前のように抱えられる事が多くなったせいか、こうやって密着されても平気になってきた。
慣れっていうのは怖い。
それでもいい加減、離れたい。
まずは意思表示として、両手を突っぱねてもがいてみた。
少しゆるんだが、解放されたとは言い切れない状態に急に恥ずかしくなった。
何より目の前の青年の視線が痛い。
「地主様、あの。離してください」
「……。」
再び背に回された腕に、力がこもって抱き寄せられてしまった。
無言で拒否されたと知る。
彼のまとう香りに包まれて、本気で慌ててしまう。
咽喉の奥で小さく悲鳴を上げてしまったが、聞こえただろうか?
「おい! 嫌がっているじゃないか。離してやれ!」
青年が地主様の肩に手を掛けたようだ。
今にも飛び掛りそうな勢いに押されながら、何とか場を取り繕おうと声を上げた。
「あの、大丈夫だから乱暴な事、この方にしないで?」
彼の琥珀色の瞳に見えていた怒りが収まった様に見えた。
頷いて見せると、彼も「わかったよ」と呟いて頷いてくれた。
ほっとした。大声を出されるのは苦手だ。争いごとのある場に身を置くのも。
次は警戒心も露わに、私を抱き込もうとする腕の主を見上げる。
「申しわけありません、地主様。足が痛くなってきたので、椅子に」
腰掛けても構いませんかと、伝え切るよりも早く身体が浮いていた。
それも一瞬の出来事で、すぐさま腰掛けさせられたと気が付く。
安定感に一息ついた。
この力強い腕から解放されたせいでもあるし、やっと足に掛かっていた負担から解放された事も大きい。
