何度も何度も心の底からお礼を言い、おかみさん一家を後にする。
急がねばますます不興を買うのは目に見えていた。
そんな彼を目にしたくは無い一心で、ただひたすらに足元だけを見つめて進む。
ただ、急がねばと焦れば焦るほど足がもつれて仕方が無かった。
おかみさんたちの言葉もあってか、彼は声を荒げる事はなかった。
でも、きっと言いたいことが山とあるに違いない。
それをこれ以上増やさないためにも、急げ、急げと歯を食いしばって前に進んだ。
泣きそうになりながらも足を引っ張るうちに、乗り合い所の看板を見つけた。
ほっと一息つく。
これからは一人で戻れば良いから、少しの間だけこの重苦しさから解放される。
地主様は先に馬でお戻りになるだろうから、ここで見送れば良いだろう。
当然のことと頭を下げた。
「乗り合い所はあちらのようですので、それでは一旦失礼します」
「!?」
告げたとたん、彼の動きが停止した。
その様子に私も固まる。
