「今ならいいかな。春菜、今から本当のことを話すね」



春菜には本当のことを知ってもらいたかった。


ポツン、ポツン、とあの頃のことを思い出していった。




「高校の時、わたしと仲森さん……付き合っていたでしょ?」

「えぇ……麻菜、今は彼のこと仲森さんって呼んでるのね」

「まあ……今は恋人じゃないし。上司と部下っていう関係だから」



こうして線引きをしなければ……これ以上、わたしが彼の中に踏み込んではいけない。


彼とわたしは上司と部下―――

こう何度も言い聞かせてきた。




「仲森さんが事故に遭ったことあったでしょ?その事故でわたしたちが気まずくなったことも」

「あったわね……でも、あれは……」


「その時、たまたま両親からアメリカに帰ろうと思うんだけどっていう話が来たから、わたしはその話に乗った」



アメリカ人の父と日本人の母が出会ったのは、アメリカのニューヨークだった。


二人は若い頃アメリカに住んでいて、思い出の一杯詰まったアメリカに帰りたくなったらしい。


わたしはちょうどいい機会だと思って、一緒にアメリカに行くことにした。


彼を忘れるために、彼との関係を断ち切るにはタイミングのいい話だったから。