騙されてあげる~鬼上司に秘密の恋心~




これ以上、ここにいてもらうことは出来ないから。

でも仲森さんにじっと見つめられると、その後の言葉が出てこなくて。




「もう大丈夫だから、ここから出てけって?」

「あ、えっと……別にそこまでは……」



「悪いけど、出てけって言われても出ていかないから。こんな状態の麻菜を一人にさせておくなんてこと、出来ない」



いつもの無表情のままこう言い残すと、仲森さんは寝室を出ていった。




どうして……

どうしてまた……わたしのことを“麻菜”って、どうしてそう呼ぶの……?



ダメだよ、わたしたちは距離を置かないといけないの。

それ以上の領域には踏み入れちゃいけないんだよ、お互いに……




少し経つと、冷えピタとコップ一杯に入った水を持って仲森さんが戻ってきた。


前髪をすっと上げられると、そこに冷えピタを張った。