「君も十分有能だ。それに……」
ジョンはわたしの肩をそっと引き寄せ、わたしの髪をすくった。
「君と離れるのは辛いんだ。僕は君がいないと生きていけない」
耳元でこう囁く彼は、どんな女性も虜にしてきたプレイボーイだ。
わたしにもよく「好きだ」と言ってくるけれど、それが本気なのかは定かでない。
普段の彼から考えると、おそらく遊びだ。
「はいはい」
たとえ彼が本気だったとしても、それに応えるつもりは全くない。
彼の扱いに慣れてきたわたしは、こうして適当に受け流すことが多い。
「麻菜も嬉しいだろう?また僕と一緒にいられて」
「はぁ?嬉しいじゃなくて疲れるの間違いじゃないの?」
確かに友人として一緒にいるのは楽しいし、上司としての彼はとても頼りになる。
でも、わたしの楽しいと彼の楽しいの基準が違いすぎていて、一緒にいて疲れるのも事実だ。



