騙されてあげる~鬼上司に秘密の恋心~




「いや!触らないで!」


どうしても嫌だった。


幸さんを触った手でわたしを触るのが。

幸さんを抱きしめた腕でわたしを抱きしめるのが。



「まな……?」


バシッと彼の手を払ってしまって、自分でも驚いたけれど。

それよりも彼の表情がこれまでにないくらい曇ったことに驚いた。



「麻菜、俺何かした……?何か嫌われることをしたのなら言ってほしい。もう麻菜に避けられるのは嫌なんだ」

「そんなこと言ったって……秀ちゃんは最後にはどうせ離れて行っちゃうんでしょ?」