何が何だか分からないまま、幸さんが言うようにその言葉を発してみた。
それなのに、ムッとしながらわたしの腕をバシバシと強く叩く幸さん。
「も~!それじゃあ、全然ダメ!普通、ウイスキーって言ったら最後に口角上がるものなのに、どうして上がらないのよー!」
「どうしてって……それより幸さん、痛い……」
幸さんが腕が真っ赤になるくらいに叩くたび、わたしの顔はどんどん歪んでいく。
痛い……幸さん、バカ力……
「いい?ウイスキーって最後の母音が“い”でしょう?普通はそこで自然と口角が上がるものなの」
「はい……?」
「はい、もう一度。ウイスキー」
「ウ、ウイスキー……」
もう完全に、幸さんのペースに乗せられていた。
本当は裏で呑気にこんなことやっている場合じゃないのだけれど、どんどん幸さんのペースに巻き込まれていく。
「全然ダメ!どうしてどんどんトーンが下がっていくのよ!」
「え……」



