「そんな……」
「ですので、取り置きが出来ますが、そうしておきましょうか?」
すると、落ち込んでいたおばあちゃんの顔がぱぁっと明るくなって。
「はい!そうしておいてください」
「では、お名前をお伺いしてもよろしいですか?」
「深田と言います」
「深田様ですね。それでは、こちらのワンピースのSサイズ、取り置きしておきます」
レジの横に置いてあるメモ用紙にお客様の名前を書き込んだ。
「では、また。孫と一緒に来ます」
「はい。お待ちしておりますね」
それからおばあちゃんは「ありがとう」と言って、店を出ていった。
接客で初めてもらった「ありがとう」は、お孫さん思いの優しいおばあちゃんからだった。
ありがとう……なんて随分言ってもらったことない。
感謝の気持ちを言われるってこんなにも心を温かくするものだったんだね。
忘れていた感情が、一つ蘇った。



