騙されてあげる~鬼上司に秘密の恋心~




「えっと……?田畑……さん?そうですね、向こうは本場なので……まぁ」


胸についたネームを見ながら、彼女の名前を確認。




「やっぱりそうなのねぇ……あっ、それから私のことは幸でいいわよ」



この人は他の女性社員と違って、話しやすい人だった。



田畑幸(たばたさち)さん。

出来る女という言葉が相応しそうな、そんな完璧な女性だと思った。






そして、13時を回ろうとしていた頃……


「加藤、先に昼とっていいぞ」

「え……あ、はい」



仲森さんに“加藤”って呼ばれるのまだ慣れないなぁと思いながら、さっそくお昼にしようとした。


5人くらいしか入れないSTAR☆店の店員のみの休憩室でお弁当を広げた。




「……はぁ。とんでもないことになっちゃったなぁ」

「とんでもないことって?」

「へ……きゃっ!」



この中には誰もいないと思っていたのに、いきなり声がするものだから、驚いてパイプ椅子から転げ落ちそうになってしまった。