騙されてあげる~鬼上司に秘密の恋心~




「昔は文句ひとつ言わなかったのに、秀ちゃん気が短くなった?」



ちょうど、その時。


「昔は優しかったのに、あなた、今は本当に短気よねぇ」


わたしたちと同じような会話を繰り広げる人たちがいて、お互い顔を見合わせてしまった。



そして、再び秀ちゃんと顔を見合わせると、4人同時に噴き出した。


相手カップルは、4,50代の夫婦といったところだろうか。




「ご旅行ですか?」


涙黒子のある優しそうな奥さんの方が、一歩前に出て聞いてきた。


それに、秀ちゃんが「そうなんですよ」とにこやかに答えると、


「私たちもなんですよ」


今度は旦那さんの方が言う。


旦那さんも穏やかそうな感じの人で、雰囲気が似ている夫婦だと思った。




「ふふっ、素敵な旦那さまですね」

「え?」