騙されてあげる~鬼上司に秘密の恋心~




それは仲森さんだった。


わたしの知らない仲森さんの一面を垣間見た瞬間だった。


どうしちゃったの……こんなに冷たくて、らしくないと思った。


私の知っている彼はもうここにはいなかった……




「やぁねぇ、相変わらず鬼上司よね……」

「あーぁ、怖い怖い」



ヒソヒソと陰口を叩きながら、女性社員たちが仕事に戻っていった。


いつも笑顔で周りから愛されるキャラだったのに、一体どうしちゃったのよ……


久しぶりに会った彼は、部下から恐れられる存在となっていたのだ。




「加藤、レジの使い方を教えるから付いてこい」

「はい」



仲森さんは昔と違って口調はきついけど、教え方は丁寧で優しい。


昔と180度変わってしまった性格、変わっていない性格。


わたしを“加藤”と呼ぶ声。




少し寂しい気もしたけど、これでよかったんだよね……?

少なくともわたしはこれでよかったと思ってるよ……