騙されてあげる~鬼上司に秘密の恋心~




そう思ったら、話しかけてくる人たち全てがわたしたちのことを知っているのではないかと疑い始めてしまった。


でも、他の人たちの注意は全く別のものにあって。




「加藤さん、ジョンって彼女いるの?」



これじゃあ、全くアメリカにいる頃と質問が変わらないと思った。


ジョンはすっかりここの女性たちもすっかり虜にしてしまったか。




「うーん、彼女はいないと思いますけど……」

「本当!?」



ジョンは特定の彼女を作らないから、わたしが知る限りずっと彼女はいないはず。


まぁ、「女の子はみんな僕の彼女だよ」なんて言ってるおバカさんだしね。




「でも、ジョンってアメリカでもすごくモテたんじゃない?」

「まぁ、あの容姿ですからね。女性に不自由したことないみたいですよ」

「やっぱりねぇ」



今、女性たちは手を動かすことより口を動かすことの方が忙しいらしい。


仕事そっちのけで、ジョンの話題で盛り上がっていた。




「何してるんですか。サボってないで仕事してください」



この声は誰のものなの……というくらい低くて身がすくんでしまうようなそんな声の持ち主。