私ももう“秀ちゃん”じゃなくて、“仲森さん”って呼ぶようにしよう。
仲森さんとは一線引いて、上司と部下として、ただそれだけの関係で付き合っていかなければならないのだから。
「ねぇ、加藤さん。仲森さんと知り合いって本当?」
洋服を丁寧に畳み、並べていると、先程ジョンの登場で目を輝かせていた女性の一人が声をかけてきた。
えっと……まだ名前が分からないや。
「あ、ごめんなさいね。私は藤田(ふじた)って言います」
「藤田さん……よろしくお願いします」
人の名前を覚えるのが苦手なわたしは、何度も心の中で藤田さんの名前を繰り返した。
「それで、どうなの?仲森さんとは知り合い?」
「それは……さっき店長にも言ったんですけど、わたしと仲森さんは知り合いではありません。今日初めて会いました」
「……そう。あなたがそう言うなら、何も言わないけど。……でもね、加藤さん。嘘はいつかバレるものよ?」
不敵な笑みを浮かべ、藤田さんは違うディスプレイの方へと移動していってしまった。
今のは……何?
嘘はいつかバレるもの……って、藤田さんは何かを知っているの……?
もしかして、仲森さんは一時期かなり有名だったから、色々嗅ぎまわっている人がいるのかもしれない。



