騙されてあげる~鬼上司に秘密の恋心~




「それに俺の本当の夢は……」

「え?本当の夢?」

「もしかして、麻菜。忘れたとか……」



仲森さんの本当の夢……




「プロ野球選手になること、でしょう?」

「……やっぱり。忘れてる」


何かをボソッと呟いた彼の言葉は、わたしの耳には届かなかった。




「とにかく、俺は麻菜のこと恨んでないし、恨んだこともないから」



一気に心にあった重りが……

なくなった気がした。




「だから、そんなに泣かないで。頼むから……そんなに自分を責めないでくれよ」



目に涙をためて、必死に流すのをこらえていたわたしに

手を伸ばした仲森さんは、優しく涙を指で拭った。




「本当に……?ほんとに、恨んでない?」

「うん、全然」


「わたし、ずっと恨まれてるって思ってたから……再会してもこの気持ちは伝えないって心に決めてたんだけど……」