「……はぁっ、はぁっ……」



ラーメン屋からここまで全力疾走で。

乱れる呼吸の中、ゆっくりとそのチャイムを押した。



———ピンポーン




「……はい?」


たった十秒くらい待っただけなのに、それがすごく長く感じた。



やっと聞こえた彼の、仲森さんの……


秀ちゃんの声。



もう迷わない。

もう逃げない。




「仲森さん……麻菜です」

「え?麻菜?ちょっと待って……」


ドタバタと中から少し音が聞こえてきたと思ったら、勢いよく扉が開けられた。




「麻菜、どうした?こんな時間に……」

「あっ、ごめんなさい。こんな遅くに……でも、どうしても今言いたくて」

「俺に話?麻菜からなんて珍しいな。玄関じゃなんだし、中入りな」