だって、彼は本当に優しい人だから。
相手の気が済むまで、ずっと付き合ってあげると思うの。
「それよりさぁー。はい」
「………はい?」
何やら手を差し出してくる仲森さん。
この手は一体……なに?
「久しぶりに手繋いで帰ろう」
「え……手、繋いでって……え?」
戸惑うわたしを余所に、表情一つ変えずに手を掴んだ彼。
触れた瞬間、手にジワリと汗がにじんだ。
「な、仲森さん!ちょっ!手、離してくださいって!」
「麻菜、久しぶりじゃね?こうして手繋いで帰るの。高校生以来?」
わたしの抵抗も敵わず、逆に握る力を強めてきた。



