ようやく口を開いた彼はとても切ない表情を浮かべていた。
仲森さん……?
「もう無理なのか?麻菜……」
「え……?」
「もう……あの頃みたいに秀ちゃんって呼んではくれない?」
仲森さんが、いつもと違う。
彼の熱い瞳がわたしを捕えた。
思わず足を止めてしまいそうになった。
「麻菜の笑顔をもう見ることは許されないのか?」
「な、仲森さん?あの……」
もう一度顔を歪ませると、彼は再び口を閉ざした。
頭をクシャッと掻くと、わたしの一歩前を歩き階段を上り始めた。
仲森さんの表情は見えないけれど……
何だか、彼の背中が泣いている気がした。



