「本社からやって来たジョン・テイラーです。よろしくお願いします」
あ……やられたな、このスマイルに。
きゃー、と黄色い声を上げている女子社員もいれば、目をハートにして輝かせている者もいる。
本当、罪作りな男なんだから……
「……加藤、挨拶!」
「あっ、えっと……同じく本社から来た加藤麻菜です。よろしくお願いします」
いけない、いけない。
ボーっとしてて自分の挨拶をすっかり忘れてた。
ん……?
なんだかさっきからずっと見られているような気がするんだけど……気のせい?
「あの、わたしの顔に何か付いてます?」
挨拶してからというもの、男性社員の視線が痛くて、すごくケンカ腰に返してしまった。
そんなわたしの態度に驚きを隠せない様子の人たち。
「あはは……すみませんねぇ。加藤は元から気が強くて……」
気まずくなった雰囲気を取り作ろうようにジョンが頭を下げながら言う。
男性社員は苦笑いを浮かべるだけだし、女性社員は部下思いの上司だとますますジョンに熱い視線を送っていた。



