「店長、申し訳ないのですが。この加藤は向こうで製作担当でしたので、接客業では全くと言っていいほどの素人なんです」
そう……
わたしは実は接客業というものをしたことがなくて。
ここの助っ人として選ばれた理由は、わたしの服に対する思いや、仕事への熱心さを買われただけなんだ。
「そうか……。じゃあ、こっちで加藤の教育係を一人つけるとしよう」
「ありがとうございます。加藤は洋服に対する情熱は人一倍ありますから、役に立てるとは思います」
「そうかそうか。それは加藤にも期待大だなぁ」
いやいや、店長さん。
わたしに期待されてもお役にたてるかどうか……
それにジョンもわたしを持ち上げすぎだし。
「じゃあ、今から顔合わせということで。社員たちに紹介するとしよう」
店長に集められ、開店前の店内にズラリと並んだ社員たち。
この人たちがこれから一緒に仕事をしていく仲間なんだ。
「アメリカ本社から助っ人としてやって来たジョンと加藤だ」
店長から紹介を預かると、パチパチと歓迎の拍手が聞こえてきた。
まずはジョンから、にこやかに王子様スマイルを炸裂させていた。



