「仕事なのよ。そこら辺の分別はつけてくださいね。わたしの上司でもあるんですから」

「……分かりましたよ。“加藤さん”」



こいつ……嫌味ったらしく「加藤さん」の部分を強調した。


仕事とプライベート、わたしは公私混同はしないタイプ。


この男はこの考えを持ち合わせていないようだけれど……




地下鉄に乗り、5つ目の駅に到着すると、一気に人が駆け込んできてすし詰め状態となってしまった。

この人並みに逆らうことが出来ず、あっという間に押され隅に追いやられた。




そして、目の前には50代くらいの禿げたオジサン。

なんか、さっきからニヤニヤ顔でこっちを見てくるんだけど……


鼻息荒いし、妙に近い距離間。


しかもオジサンの腕がわたしの胸に当たってる!!




「麻菜、こっちおいで」


器用にわたしと立ち位置を変わったジョンは、オジサンから守るようにわたしとオジサンの間に立つ。


しかも周りに押し潰されないように、わたしの肩に手を乗せたままのジョン。


もしかして……守ってくれてるの?